■ 質問事項(目次)
<使用方法>
Q1 金液は薄めて使ってもいいですか? また、何で薄めればいいですか?
<保存方法>
<焼成方法>
<焼成後の状態>
Q14 焼成した金鏡面を指や布で擦ると金が剥がれてしまった。
Q16 焼成した後、金を塗った部分が茶色く透けて見えるようになった。
<その他 (金液・ラスター液の特性、成分など)>
Q20 金皮膜のついている食器は、電子レンジで使用出来ないのですか?
Q21 電子レンジ用の金液を使用すると何故スパークしないのですか?
Q22 上絵付けした金皮膜を剥離したいのですが、どうしたらいいですか?
Q23 真珠ラスターを塗って焼成したが、色が出ません。何故ですか?
■ 質問の回答
Q1 金液は薄めて使ってもいいですか? また、何で薄めればいいですか? |
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・金液は希釈出来ます。原液で使用する事が基本ですが、塗りにくい場合や溶剤分が揮発して金液が少しかたくなった場合及び塗る面積や使用する筆などの用具に応じて適宜希釈してください。概ね5~10%程度を目安に希釈してください。 ・ラスター液に関しても金液と同様の使用方法です。 ・金液の希釈液は、金油または溶剤を使用してください。(金液・ラスター液は油性の塗料ですので、水は使用不可です。) |
Q2 金液の臭いで気分が悪くなってしまった。 |
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・金液には有機溶剤が含まれています。使用量が限定的なため人体への有害性も限定的ですが全く無害ではありません。気分が悪くなった場合は、取り扱い作業を中止して、空気の新鮮な場所で安静にしてください。必要に応じて医師の診察を受けてください。 ・金液を使用する場合は、締め切った部屋での使用は避け、換気を良くしてご使用ください。 |
Q3 金液が皮膚に付いてしまった。 |
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・金油やシンナー、アルコールなどを少量含ませた布又はティッシュペーパーなどで拭き取った後、石鹸で良く洗ってください。 ・皮膚刺激または発疹などが生じた場合、医師の診察、手当てを受けてください。 |
Q4 金液が衣服に付着してしまった。 |
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・付着した衣服を脱いでください。付着した衣服のまま作業を続けますと、湿布効果となり炎症を起こしやすくなります。 ・衣服を再使用する場合は、洗濯またはクリーニングに出してください。 |
Q5 異なる金液同士を混ぜられますか? |
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・含有する金属組成のバランスが悪くなり発色に悪影響を与えることがあるため、混合しないでください。 ・他社製の金液との混合は絶対にしないでください。 ・異なる種類の金液同士、ラスター液同士など、すべての場合において混合はお勧めできません。 |
Q6 金液は、100g(または10g)でどれ位の面積が塗れますか? |
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・例えば11%の赤金の場合、原液を使用して、標準的な濃さで 60,000cm2程度の面積を塗ることが出来ます。 つまり、200cm×300cmの面積(畳3枚分程度)を塗ることができます。 ・10gの金液では、100gの1/10程度、つまり200cm×30cm=6,000cm2程度(A4サイズ 10枚分程度)の面積を塗ることができます。 但し、塗り方の濃さにより多少前後することがあります。また塗布時の金液のロス分は考慮されていないので参考程度としてください。 |
Q7 金液を広い面積にムラなく塗るポイントは? |
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・大きな面積に均一に塗布するためには、まずべた塗り用金液をご使用ください。また塗布する製品および面積、使用する刷毛などの用具に応じて適宜金液を希釈して塗布してください。乾燥が早いと刷毛目などが残りムラが発生しやすくなるため、遅乾性の金油を使用することをお勧めします。 ・金液中の溶剤が蒸発して液が固くなってきた場合などにも筆ムラが出来やすくなります。金液の状態や気候に応じて、希釈用の金油を少しずつ加えて粘度を調整してください。 ・金液の表面が乾燥した状態の上から塗り直しのためにリタッチを行うと更にムラがひどくなってしまいます。金液の表面が乾燥する前に一気に塗布することがポイントです。 |
Q8 金液の保存はどんな方法がいいですか? |
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・金液のビンは密栓の上、直射日光の当らない涼しい場所に保存してください。 ・冷蔵庫に入れる必要はありません。冷蔵庫で保管を行うと金液を使用する為に冷蔵庫から出した際にビンが結露します。キャップを取ればビンの中も結露してしまいます。 ・金液は湿気(水分)に対してデリケートです。電子レンジ用の金液や、ラスター液の一部の製品で空気中の湿気を吸収し固まってしまう性質があるのでご注意ください。 ・ビンから出した金液は、元のビンに戻さないようにしてください(使用する分だけを金猪口などに出してください)。小出しした金液が残った場合は、ガスバリヤ―性の良い別の容器に入れて保存してください。 |
Q9 使用期限はありますか? |
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・金液の種類にもよりますが、赤金などでは通常、未開栓の状態で3年程度は問題なくご使用頂けます。 ・開栓後は保存状態にもよりますが、目安としては液の性状が変化していなければ問題なくご利用可能です。液が増粘していたり、液中にブツブツした固まりの様なものが含まれている場合は注意が必要です。テストピースなどで使用可否を確認後ご使用ください。 ・液が増粘していたり固まっている場合は、金液中の溶剤が蒸発したためか、空気中の水分などと反応して固まったかどちらかです。金油を少しずつ入れて溶かしてみてください。前者の場合は、固まった金液が再溶解して使用可能になります。後者の場合は、金液がきれいに溶けず、ボロボロの状態になりますので使用不可となります。 |
Q10 金液は、何度で何分焼成すればよいのですか? |
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・『金彩の話』の、5、焼成についてを参照してください。 |
Q11 ガス抜きって何ですか? |
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・金液は、金と樹脂の化合物で出来ています。金液の樹脂が燃える時にガスが発生します。また、転写紙が貼ってある場合は更に転写紙からもガスが発生します。このガスが炉内に充満すると酸欠状態となり、金の皮膜が曇ったり、付着不良を起こしたりする原因となるためガスの発生が終わるまで少し(2~3cm)炉の蓋を開けて焼成してください。 ・樹脂などの有機物が燃える時のガスは400℃程度を超えると出なくなります。400~450℃付近になりガスが発生しないことを確認後、完全に蓋を締めて焼成してください。 |
Q12 金鏡面(金皮膜)が曇ってしまった。 |
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・前述の、ガス抜きがうまく出来ていなかった可能性があります。金液の焼成時に酸欠状態で焼成すると金皮膜が曇ることがあります。 ・金皮膜が釉薬に喰われてしまう場合に発生することがあります。釉薬の焼成温度に対して500℃程度下げた温度で焼成するのが基本ですが、それよりも高い温度で焼成すると釉薬が緩み、釉薬に金皮膜が少し沈んでしまうイメージです。温度を下げて焼成することで改善します。 ・釉薬の性質や成分が金皮膜に影響を与えることがあります。黒色やルリ色など釉薬の中には釉薬中の金属成分と金液の成分との相性が悪いものがあり、金皮膜が曇ったり発色が悪くなることがあります。特に織部釉の様に銅が含まれているものは強い影響を受けることが分かっています。 ・金液の焼成皮膜は0.1μm(100nm)程度の薄膜です。従って、焼成温度や釉薬からの影響を受けやすいので注意が必要です。 酸欠状態で表面状態に不具合が発生した場合を除き、焼成温度を下げることで改善することがあります。先ずは50℃程度低い温度で焼成テストを行ってください。 ・金液や白金液を濃く塗りすぎた場合にも曇りが発生することがあります。薄く塗ることで改善しますが、薄すぎると発色に影響が出ます。テストピースなどで最適な濃さを確認、習得していただくことをお勧めします。 |
Q13 金鏡面にクラックが発生してしまった。 |
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・上絵具やフリットの上に金液を塗布した時に発生する可能性があります。このような場合は、100~150℃程度温度を下げて焼成してください。 ・素地がボーンチャイナの場合にも発生する事があります。ボーンチャイナは釉薬が軟らかく、温度を上げて強く焼成すると釉薬が緩んで動く為に起こります。温度を下げて焼成するか、ボーンチャイナ専用の金液を使用してください。 |
Q14 焼成した金鏡面を指や布で擦ると金が剥がれてしまった。 |
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・摩耗により金皮膜が剥がれてしまう原因の多くは、焼成温度が低すぎた時に発生します。それぞれの素地に適した炉の設定温度を確認してください。温度不足により金皮膜が剥離する場合は、適切な温度で再焼成することで改善することがあります。 ・前述(Q11)の様に、ガス抜きが不十分な時にも付着不良が起きることがあります。 ・金液やラスター液を濃く塗りすぎた場合にも剥離が発生することがあります。著しく濃く塗りすぎた場合は、焼成後に皮膜がめくれ上がる様に剥がれて浮いてしまう事があります。 |
Q15 金鏡面に小さな、多数の小穴(ピンホール)が発生した。 |
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・ホコリが原因で発生する事が多く、金液を塗る前に素地にホコリが付着していた場合や金液を塗った後乾燥する前にホコリが付着してしまった場合などに発生しやすいのでご注意ください。 ・湿気の多い環境で作業した時や、手の指紋、ハンドクリームが付着した場合などにもピンホール発生の原因となりますのでご注意ください。 ・金液を塗布する素地の表面状態を清浄な状態に保ち、べた塗り用または耐ガス用金液を選定することで改善できます。 |
Q16 焼成した後、金を塗った部分が茶色く透けて見えるようになった。 |
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・「金燃え」という現象です。金燃えは、金液の耐熱温度を超えて焼成を行った際に起こる現象です。金液の種類にもよりますが、850℃を大きく超えて焼成を行うと金皮膜が焼結して結晶のような形となり、薄いフィルムの状の皮膜が形成されなくなります。温度を下げて焼成することで解決します。 ・前項Q12に記載したように、素地の最適温度よりも高く焼成した場合に金皮膜が釉薬に喰われてしまった時にも同様に茶色く透けたように見えることがあります。上記同様、温度を下げて焼成する事で解決します。 ・焼成してしまった製品を修正するには、金取り棒などで金皮膜を剥がしてから、もう一度金を塗り温度を低くして再焼成してください。 |
Q17 金液は何で出来ていますか? |
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・金液は、金属レジネートというもので構成されています。溶解した金属と樹脂を反応させたもので、有機金属化合物とも言います。 ・構成されている金属は、金をはじめ釉薬の付着剤の役割をする金属(ビスマス等)及び鏡面を作る為の金属(ロジウム、クロム等)などです。 その他、塗料化するために必要な樹脂、有機溶剤が含まれています。 |
Q18 金液を塗って焼成した金皮膜は、純金ですか? |
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・金液は前述(Q17)の様な成分構成で作られていますが、乾燥および焼成時に有機溶剤や樹脂などの有機物は揮発、分解されて金属成分だけになります。皮膜の主成分は金で、赤金の場合では約95%が金となっており、その他の付着剤などの金属は約5%程度です。 従って、金液の焼成皮膜の純金度は約95%となります。純金を24K(カラット)で表現する場合、約23K(カラット)となります。 |
Q19 金液は燃えますか?(引火しますか?) |
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・可燃性の有機溶剤が含まれていますので、金液の蒸気には引火する可能性があります。使用する際は火気に注意して換気をよくしてご使用ください。 ・金液は消防法で分類すると危険物第4類第2石油類または第3石油類に属します。身近なところでは灯油と同じような性質(引火性)を持っているとお考えください。 |
Q20 金皮膜のついている食器は、電子レンジで使用出来ないのですか? |
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・食器類に焼き付けてある金皮膜は純金に近い金属皮膜である為、非常に導電性が良く、電子レンジに入れるとバチバチと音を立ててスパークします。 ・一度スパークした部分は皮膜が断線するため、再度レンジにかけてもスパークしなくなります。スパークした部分は金皮膜の外観が悪くなりますが、食器が使用不可になったり、電子レンジが故障する訳ではありません。 ・電子レンジ対応の金液で金彩を施した食器は使用可能です。 |
Q21 電子レンジ対応の金液を使用すると何故スパークしないのですか? |
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・金液に特殊な加工を施してあり、焼成後の金皮膜には導電性がありません。従って、電子レンジで使用してもスパークしません。 ・しかし、この特殊加工により皮膜の色は金色をしていますが、通常のブライト金液の金皮膜と比較すると、その発色は幾分暗くなります。 |
Q22 上絵付けした金皮膜を剥離したいのですが、どうしたらいいですか? |
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・金取り棒(チョークの様なもの)またはイレイサー(研磨剤が入った特殊な消しゴム)で不要部分を削り取ることが出来ます。 ・製品(素地)にキズが付かない様に注意してください。 |
Q23 真珠ラスターを塗って焼成したが、色が出ません。何故ですか? |
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・原因は、真珠ラスターを濃く塗りすぎたか、薄め過ぎたかのどちらかです。 ・前者の場合は、焼成皮膜が粉を吹いた様になります(手で触ってみると白っぽい虹色の粉が付着します)。対処方法は、少し薄めて塗布するか原液を薄く塗りのばしてください。液が溜まるような状態での塗布はNGです。 ・後者の場合は、真珠独特の虹色が出ないで光沢だけが出る状態です。加減しながら濃い目にご使用ください。 ・真珠ラスターは焼成皮膜の薄膜干渉によって様々な色調が得られます。つまり皮膜の厚さによって異なった干渉色が得られ虹色となって現れます。 どの位の濃さで塗るとどのような発色が得られるのか、テストピースなどで実験を行い、濃度と色調の関係性を習得していただくことをお勧めします。 |